帳簿の世界史

最近読んだ本にジェイコブ・ソール著・村井章子訳「帳簿の世界史」(文芸春秋)があります。

また本の紹介かよ!と思わずに・・・(笑)

 

帳簿という1つのキーワードを通して西洋の歴史を紐解いていく・・・
かなり野心的な著作です。
学部・大学院と歴史学を勉強してきた自分から見ると、
「おお~すごいテーマだ!」と唸らせられました。

目の付け所が面白いと自分は感じましたので、ご紹介します。

 

著者曰く、「複式簿記」を正しく運用できた者が歴史上、成功をおさめている。

イタリアの銀行家のメディチ家、スペインのハプスブルク家のフェリペ2世、

ネーデルランドの黄金時代、フランス・ブルボン朝最盛期のルイ14世、

借金まみれの英国を長期政権で支えたウォルポール、名門ウェッジウッドの成功、

フランス絶対王政を丸裸にしてしまったネッケル、

会計の力を駆使してアメリカの基礎を築いた建国の父たち・・・

こういった人物や勢力のエピソードを紹介しつつ、
その成功と失敗の影に「会計帳簿」の存在があると著者は指摘しています。

 

この著書を読みながら自分がツヨク感じたのは、
西洋の人にとって帳簿をつけるという行為には
宗教的な意識が潜んでいるということです。
帳簿というのは複式簿記だとしても不正を犯し、
虚偽の記載をすることは可能です。

帳簿をつけるというのは自分の弱い部分や人に見せたくない部分も
しっかり記入しなければなりません。
自分の弱さと道徳心を試されるのが帳簿作成だと思います。

 

著者が最後に言いたかったことは「帳簿」そのものではなく、

しっかりと帳簿を誠実に嘘偽りなく、継続して付け続ける・・・

そういう強い道徳心なのかもしれませんね。

 

世間ではコンプライアンスという用語が氾濫して
本当の意味でのコンプライアンスが何なのか
わかりにくくなっている感じがします。

「コンプライアンスで飯が食えるか!」とおっしゃる方がいるかもしれません。
しかし、この著作を読むと縁の下の力持ち、土台を支える確かな礎のように
「帳簿」は見えないところで地味ですが堅実に働いています。

 

自分にとっては目から鱗でいろいろ考えさせられた作品です。

興味を持たれた方は秋の夜長の読書タイムに読んでみるのもありだと思います!

 

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